◆「日常のなかにあるドロ沼」がリアルすぎる
こちらはNetflix版に限ったことではありませんが、改めて『阿修羅のごとく』の描く人間の業が、凄まじくリアルだと感銘を受けます。最近の映像作品は、視聴者に考察させたり、ジェットコースターのような展開で次々と真実が明らかになったりするものが主流。しかし、リアルな世界ではどうでしょうか?

「女はね、(浮気や不倫について)言ったら負け」「人間なんて厚かましいもんなんだから」など多くの台詞は、令和のイマ聞いても頷いてしまいます。視聴者に対しても、細かく心情や関係性を説明することも、すべての真実を明らかにすることもありません。暴かれないことにこそ、そこにあるドロ沼にリアリティを感じるのです。

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ちなみにNHK版『阿修羅のごとく』は未視聴だった筆者ですが、今回NHKオンデマンドで初視聴。45年前の作品とは思えないほど引き込まれ、見応えがありました。恐るべき向田邦子脚本。令和の実力派俳優たちと是枝監督をはじめとするスタッフによって再構築された傑作、昭和生まれの方は特に必見です。
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201