落とし穴5 売りたくても買い手がいない

現時点ですでに発生しているかもしれないし、将来表面化する可能性があると思われるのが「不動産を売りたくても売れない」問題だ。所有者不明の土地がもはや九州全土を上回るほどの面積に達した今、不動産は「『負』動産」、つまり所有者を苦しめる負の財産と言われている。所有者不明の土地の多くは農地や山林など、都心部の人間が管理するには負担が大きい不動産が中心だ。しかしこの話は、アパートやマンションの持ち主である投資家にも無縁ではない。

今後もさらに少子高齢化が進み、人口減少が続くとなれば、現時点で活況を呈している地域も30年後には不況となっているかもしれない。そして、若い世代になればなるほど「持ちたがらない」傾向にある。管理の手間や固定資産税などのコストがかかることを嫌うのだ。これには実収入に占める非消費支出(税金、社会保険など)の割合が20%近くある現在の家計の状況が背景にある。今あるお金をなるべく現預金や形のない資産で残しておきたい現役世代は、どんなに安くても土地や建物を買おうとしない。

「やっぱり不動産は管理が大変だし、売りたいな」と思ったときに、買い手がいない。いなければ自分で固定資産税を払い、管理を続けていくしかない。現代における不動産の最大の難点は「やめたくてもやめられない」ことにあるかもしれない。

落とし穴6 高齢リスクを考えていない

不動産投資を検討しているのは大抵20~50代だ。特に人間は40歳を境に老後を考える傾向にある。そして、40代や50代はまだまだ体力があり、思考力が冴えている時期だ。ただ、この体力や思考力が30年後や40年後、同レベルであるとは言いがたい。むしろ低下している可能性が高い。

一方、「不労所得」のコピーで売り込まれる不動産運営は、現実には完全不労所得とは言いがたい。物件の判定には時間をかけて足も頭も使わなくてはならない。運営していくにはそれなりに現金支出が伴う。入居者がいたらいたで、修繕やトラブル解決に体を動かす必要がある。さてそれを、60歳、70歳過ぎた後にもできるだろうか。

自身の気力体力が低下したり、あるいは病気や事故で動けなくなったりしても代わりに不動産の運営を担ってくれる子や孫、友人などがいるなら話は別だが、そうでない場合には、高齢リスクをも検討材料にしたほうがよいだろう。

不動産の定期的な収入は、支給年金の目減りが確実な現役世代には非常に魅力的に見える。ただし、魅力的ということは、その分デメリットが見えていない心理状況をも表している。メリット・デメリットの両方をじっくり検討した上で、今後投資対象とするかどうかを考えていただきたい。

文・鈴木 まゆ子/ZUU online

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