落とし穴2 成功談やブローカーのうたい文句にだまされる
「不動産収入をじぶん年金に」と考えるそもそものきっかけに、不動産収入の成功者の成功談やブローカーのうたい文句がある。「資産ゼロで年間1000万円の家賃収入をゲット!」と言われれば、「じゃあ自分にもできるかも」と人は思う。預貯金の利子がほとんどつかない現代において、利回りが数%だと言われれば、「資金を寝かせてはもったいない」と感じるものだ。
ただし、ここで注意したいのは「おいしい話は珍しいからこそおいしく見える」ということだ。おいしい不労所得の実現を「誰もが」「カンタンに」「当たり前に」できるのなら、そもそもおいしくは見えない。確率が低く、困難だからこそおいしく見えるのだ。
例えば、「利回り8%、2250万円のローン返済済み物件を購入すれば毎月15万円の不労所得が確保できる」といううたい文句を考えてみよう。理論通りにできれば文句なしだが、現実はそうはいかない。空室リスクを考慮すると、実際には4~5%がせいぜいだ。それすら当てはまらない物件も多い。また、先述の通り、先のことは読めない。つまり、毎月15万円の家賃が35年後もあるとは限らない。人口が減少し、空室が多数発生した場合には家賃を下げざるを得ないこともある。
また「家賃保証があるから空室があっても大丈夫ですよ」という言葉にも要注意だ。家賃保証は、今後ずっと毎月の家賃を保障してくれるものはまずない。大抵は、一定期間、空室が発生した場合には、期間経過後に家賃を下げる旨の条項が契約書に盛り込まれている。さらに、すぐに家賃保証分が支払われるわけでもなく、免責期間を設けてあることも珍しくない。ブローカーは巧みに自分たちが損しない仕組みを用意している。
さらに、成功談についても鵜呑みにしないほうがいい。なぜかというと、その人が現役世代のときに成功したものについて書かれているだけで、老後の生活にまで触れているわけではないからだ。また、「実は親から贈与があった」「副業収入がそもそもあった」など、あまり書きたくない話は書かれていないケースがある。成功は一発逆転でできるものではない。投資やビジネスの勘を磨いてきたという下地があるからこそなせるものだ。
落とし穴3 固定の経費が掛かりすぎる
賃貸の運営成績と関係なく、毎月経費がかかる。管理費、修繕費、固定資産税、ローンの支払利息などだ。おおよそ、賃料収入の約20~30%を占める。
これ以外にも、物件のほとんどは10年に1度大規模修繕が必要となる。修繕積立金をしていても不足する分は現金を支払わねばならない。
ただし、上記の項目はあくまでも「経営の成績表」である損益計算書だけの項目だ。実はこれ以外にも現金が出ていく。ローン返済と修繕積立金だ。これらの支出を上回る家賃収入が得られればいいが、そういう物件に出会うことこそ難しい。不動産賃貸はローン返済が完了してやっと黒字になることが多い。
「不動産には減価償却というキャッシュを伴わない経費があるので、運用はラクですよ」という誘い文句を見かけるが、これはあくまでも黒字での話にすぎない。減価償却は税金というキャッシュフローを抑える効果しか持たないからだ。減価償却以前にすでに赤字ならば、減価償却はそもそも役に立たないことを肝に銘じよう。
落とし穴4 相続リスクを考えていない
「不動産は評価額制度のおかげで現預金よりも相続税が安くつく」--。
中には、このようなコピーで不動産投資を考えた人もいるかもしれない。確かに、土地や建物は評価制度のおかげで現預金を相続するより安くつく。ただし、それは「相続の時点」だけの話だ。その後の相続人たちの生活や目に見えないリスクまでを考慮していない。
まず、土地や不動産を相続する場合には、相続登記などの手間がかかるほか、固定資産税などがかかる。相続人が不動産を負担に感じて売却したら所得税が課税される。
さらに注意したいのが“目に見えないリスク”だ。子が複数いて、平等に分けないと不平不満が出る可能性がある場合、共有持分という方法で相続させることがある。これは一次相続ならまだいいが、二次相続や三次相続、つまり孫やひ孫の世代で相続が繰り返されると、相続人同士が「他の持分を誰が持っているかも分からない」状態に陥ることがある。
そうなると困るのが「譲渡したい場面」だ。共有持分の不動産は、共有者全員の同意がないと譲渡ができない。顔の知らない共有者が相続登記を怠っていた場合、あるいは共有者同士が険悪な仲である場合には、たった一人が同意しないために、他の共有者が不動産に縛られることになる。
相続は子や孫の幸せにつながるものであることが理想だ。その点から考えると、不動産を所有するということは、一人だけの問題で終始させてはいけないのである。