パンにあずきが添えられて目の前に出されても、社会では誰も驚きはしないだろう。それどころか、そんなものは食べたくないという人も少なくないかもしれない。だが、甘シャリと呼ばれるあずきなんかを見ると、甘さに飢えた受刑者たちの顔は子どものように目尻が下がり、ほころぶのだ。カレーの具の多い少ないが死活問題になると言われる塀の中。食をめぐる物語は無数にある。

 本書には、飽食の時代を生きる読者は感じがたい、懲役たちの悲喜交々が詰め込まれているのだ。

(文=佐々木拓朗)

『刑務所ごはん』
著者:汪楠、ほんにかえるプロジェクト/発行:K&Bパブリッシャーズ/価格:1980円(税込)

全国の受刑者200人にアンケート取材!! 料理家が再現した刑務所のごはんの写真(カラー)77点、調理レシピ27食分、各料理についての解説、受刑者からの手紙(肉筆)13点も掲載!! 「外の食事とは何が違う?」「どこの刑務所が美味しい? 」「楽しみにしている食事は? 」「嫌いなおかずは? 」「好きなデザートは? 」「出所して最初に食べたいものは? 」……食からわかる受刑者の日々の心情。
これぞ真のグルメ本!? 日本で最も「食」に執着する人々による『刑務所ごはん』の画像1

キットカットとカールにヤクザも狂喜乱舞!