「日本国内で売れっ子芸人として活躍しているのであれば、そのまま国内だけに焦点を絞って活動した方が負担は少ないですよね。忙しい中、スケジュールを調整したり、自分でお金を負担したりしてまで海外へ渡る必要は、本当はない。それにもかかわらずお笑い芸人たちが海外進出をするのは、世界中の人を笑わせたいという芸人的欲求と、より大きい成功を手にしたいという願望の両方があるからではないでしょうか。たとえば日本で数億円を稼ぐプロ野球選手が、マイナー契約でもいいからメジャーに挑戦したいと思う気持ちに似ているのかもしれません。

 また、とにかく明るい安村さんらが海外挑戦してウケているところを見て、同業者として血が騒ぐということも間違いなくあるでしょう。チョコレートプラネットが2024年に『TT兄弟』のネタを提げて『アメリカズ・ゴット・タレント』に挑戦したのは、まさにそういった気持ちだったはず。2023年5月13日放送『マツコ会議』(日本テレビ系)にとにかく明るい安村さんが出演した際、VTRで登場したチョコレートプラネットの長田庄平さんは『必死になんとかしようともがいている姿に、芸人として心打たれる』『自分の魂を削ってやっている』とリスペクトを示していらっしゃいました。やはり身近な芸人たちの海外挑戦は、大きな刺激になるのだと思います。

 ジャルジャルのケースは自分たちの可能性を試すという、笑いに対するストイックな姿勢にほかならないのではないでしょうか。ジャルジャルはヨーロッパでお笑いライブツアーを実現させるなどしていますが、その中身は、現地のお客から募ったお題を組み合わせて即興コントを披露するものだったりします。自分たちの笑いが国の違いを超えて通用することは、芸人として一番の快感なのかもしれません」

日本と海外の笑いの違い

 ただオーディション番組でウケたり、海外でライブや番組などに出演したりしても、それは「海外で活躍している」とイコールではない。海外に打って出たものの、思ったような活躍ができていないように見える芸人が少なくないのが現実だ。