一方で上位10%の層の支出は約58%も増加しており、驚くほどの購買意欲を示す数字となった。2023年9月から2024年9月までを見ても、この期間、ほとんどの国民が支出を減らしているにもかかわらず、上位10%は支出額を12%も増加させた。

資産価格の高騰が富裕層の懐支える 庶民は支払い危機目前

 富裕層の支出増を支えるのは、高騰する株価や住宅価格だ。富裕層はコロナのころに資金力に輪をかけるように投資に走った。連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると所得上位20%の純資産は2019年以来、45%も増加している。コロナ後の異様なまでの株高や資産価格の高騰が、富裕層の懐を支え、「インフレどこ吹く風」とばかりに消費に回している。

 ザンディ氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューに対し「富裕層の世帯の財政はかつてないほどよくなっており、支出もかつてないほど好調で、米国経済はかつてないほど富裕層に依存している」と指摘している。

 米国でも消費は国内総生産(GDP)の約70%を占め、国の経済活動の要となっている。49.7%の消費を上位10%だけで支出しているとなると、GDPの少なくとも3分の1をこの上位10%の層が担っているということになる。

 一方で、物価の高止まりで生活が苦しくなる一般市民の間では、支払いが追いつかない家庭が増えてきた。

 フィラデルフィア連銀が2月に発表した消費者の「クレジットカードの延滞率予測」によると、クレジットカードの支払いを、日本のリボ払いにあたるミニマムペイメント(最低支払額)だけにしているカード保有者の割合は、2024年9月末の時点で10.75%に上昇した。2012年以降、最も高い水準となっている。

 ミニマムペイメントだけの支払いを続ければ、負債額は膨れ上がるばかりで、債務不履行になる確率が高まる。現時点では最低額を支払うことで、生活をなんとか維持しているが、インフレの再燃で生活が一段と厳しさを増す中、そろそろ限界が近づき、カード破産者が社会にあふれる時代がすぐそこまできていることが、容易に予想されるようになってきた。