感情がスポイルされている、と感じるんです。
冒頭、ナレーションベースで結さん(橋本環奈)が管理栄養士になって4年、NSTに配属されてイキイキ働く様子が映し出されます。一方の翔也(佐野勇斗)は星河を辞めて、理容師を目指すという。
翔也がそれを結さんに伝えるシーンの後、「明日、花にも話そう」というセリフに重ねて、第86回の家族3人での食事シーンが挿入され、結さんの「家族で一緒にがんばろう」というセリフが続く。
ここでNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』がやったことは、「父の転職について娘への説得完了、花ちゃんも笑顔で大賛成」という構図の捏造です。過去の単なる食事シーンに「父親が転職することになっていろいろ大変だが、家族で一緒にがんばろうと団結した」という意味を後付けしている。とんだイカサマですよ。
この冒頭のダイジェストで歴史を改変する悪事、前にもやってるんですよね。「ムスビン久しぶりー!」とやってきたハギャレン一同と、「翔也アンケートよくやったエライ!」と拍手する総務の同僚たちの姿に「職場の人々、仲間たちの支えのおかげで」というナレーションをかぶせて、みんなが結&翔也の結婚を祝福しているシーンに作り替えている。第71回です。
だいたいね、生まれたときから星河電器という大きな会社で働いてきた父親が、急にサラリーマンを辞めて理容師になる。娘にだって思うところはあるでしょう。8歳なら8歳なりの葛藤や疑問があるはずなんです。少なくとも「なんでやねん」とは思うでしょう。
父親の翔也は以前から言葉足らずでお馴染みですから、マジな顔して「カッケーからだ」とか言うんだろうね。そんな翔也の背中を押して、支えることを決意した結さんが、娘を説得する役割を担うわけだ。
花ちゃんの疑問に向き合い、母親として、家族として、結さんの言葉で花ちゃんの同意と応援を取り付ける。それが母親の役割ってもんだ。