ちなみに、茜さんの母親や父親が教師だったわけではありません。
「私は先生になりたいとは全く思っていませんでした。母は、教師は人から『すごい』と言われる職業だからと、私を教師にさせたがったんです。母にとって子どもは、自慢をするための道具でした」
◆教師を目指す中で、9歳上の恩師と再会して
大学2年の頃、教員免許を取得する過程で、茜さんは卒業した中学校に行く用事ができました。母校では恩師の一人と再会します。茜さんの中学生時代、教師陣の中で最も若手だった社会科教師で、名前を達也さん(仮名)といいました。
達也さんと連絡先を交換すると、後日2人きりで会うことになりました。達也さんから交際を申し込まれて、付き合うことになります。当時、茜さんは20歳、達也さんは29歳でした。
茜さんは母親にも達也さんとの交際を報告します。
「先生ってことは国家公務員だね。将来が安定しているからいいね。絶対に先生を逃しちゃだめだよ」
といった反応です。
取材中、筆者はここで違和感を覚えました。中学時代の娘と知り合った男性なのに、心配はなかったのだろうか。さらに言えば、中学校教師は国家公務員ではなく地方公務員ではないだろうか、と。
◆彼女が、大学を休学するまで追い詰められた理由は
「母は思い込みが激しく、立派な仕事だと思ったらあとは耳を貸さないんです。
もともと教師になりたい気持ちはありませんでしたが、その先生と付き合ったことで、帰宅が23時過ぎになったり土日出勤があったりといったひどい労働環境を知り、なおさら教師になりたくなくなりました」
