それから、アンドレへの声を聞くと、どこかで気を許しているのか少し女性っぽく、フェルゼンと対峙するときは、逆にものすごく男性的で対等な立場でいようと力が入った感じがあります。
――フェルゼンに対したときのほうが男性的なんですね。
沢城:「お前とは友であって」という説明を、ずっと自分にしているように聞こえるというか。
音色の差を意識していたわけではありませんが、今回、アンドレ役の豊永さんと一緒にアフレコできたので、相手にも助けられながら移ろっていけたかなと思います。
◆表面に見える愛だけでなく、根幹にあるのはステルスの愛

沢城:アンドレへの愛やフェルゼンへの恋、アントワネット(平野綾)への愛情などが描かれていますが、私はその後ろにある“ステルスの愛”が、実は役の根幹に関わっていると感じました。
――ステルスの愛ですか?
沢城:母親から受けていた愛、父親から期待されていた愛、それから一番近くにいた乳母のマロン(・グラッセ・モンブラン、田中真弓)から受けていた愛情が、おそらく他者を理解するベースとして彼女を作っていったのだと思います。
アントワネットにしても、フェルゼンとの恋が大きく描かれていますが、愛を知ったきっかけは彼女の子どもだったのかなと。
立場としてもとても悲しい人だったと思うのですが、生まれたての子どもを抱いたときの子どもへの愛情が、きっと晩年のアントワネットを支えていたんだろうなと思います。
◆声優界ももっとのびのび力を発揮できる現場に

沢城:舞台のほうの友人の話を聞いていると、今の演劇の現場は、そうした部分をとてもクリーンにしていこうという動きが大きいですよね。