なぜ、運用することを知らない人が多いのか?
では、なぜ運用することを知らない人が多いのでしょうか? それは、お金は運用するものだと教わってこなかったからではないかと思います。
例えば、筆者の実家は自営業で、日銭が入る商売を行っており、完全な現金主義だったように思います。「お金=レジにある紙幣・硬貨」というイメージが定着していた筆者は、欲しいものを手に入れるためのお金は労働でしか得られない、と無意識のうちに思っていました。
労働でしかお金を作ることができないと思うのは足し算の考え方です。小学生がお年玉やお小遣いを貯めて欲しいものをゲットするのであれば構いませんが、20歳といえばもう立派な大人です。証券口座を開設できる年齢なのであれば、それは投資に対する知識を十分に理解できる年齢であるはずです。
お金を効率的に増やすのであれば、「足し算」ではなく「掛け算」で行うべきでした。
「足し算」ではなく「掛け算」でお金を増やそう
「足し算」の増やし方に金利はありませんが、「掛け算」の増やし方には金利があります。
例えば、住宅ローンや、身近なものでいえばカードローンなどの借金では、必ず利息が取られます。これは借り手にしてみると、お金を借りたいわば「お礼」として支払うものですが、皆さんが「貸し手側」であればそれは「利益」になります。
もし、皆さんが「貸し手側」になることができれば、その利息は働いて得た対価(労働所得)ではなく「不労所得」となります。実際に事業として融資を行うことは難しいですが、間接的に私たちは「貸し手」になることができます。それが株式や投資信託、債券、不動産、REIT(不動産投資信託)などへの投資なのです。
先ほど説明した通り、雪玉は大きくなればなるほど、効率よく雪を集めることができます。雪玉を作っては置いておき、作っては置いておき、を繰り返すよりも、雪玉を転がしながらより大きな雪玉を作るほうがはるかに合理的だと思いませんか?
この仕組みを20歳の頃理解していれば、運用をより早くスタートできていたでしょう。
なぜお金を貯め込んではいけないか
最後に、根本的なお話になりますが、なぜお金を預金などで貯め込んでおいてはいけないのでしょうか。
預金や一部保険は、多少の利息や利回りで利益が出るにしても、何年もかけておいておくとインフレ(インフレーション)に負けるからです。インフレが進行すると物価が上がり、お金の価値が下がります。物の値段が1.3倍になった場合、預金残高も1.3倍になっていないと金額が変わらなくても価値は下がっていることになります。
日本銀行は2013年1月、「物価安定の目標」として物価上昇率2%を掲げています。実際は目標通りにはいっていませんが、もしこの目標が達成できたら、0.001%など、2%を下回る金利でお金を置いておく行為は、「お金の価値を減らしている行為」とも言えるのです。
資産運用をしていると日本銀行を含めた社会の動きにも敏感になります。節約や貯金は大切なことですが、それだけでは社会の変化に気づくチャンスも減ってしまいます。そういう意味でも、運用に無関心であることは「失敗」であり、「時代遅れ」なのです。
今回の教訓
- お金を効率的に増やすなら「足し算」ではなく「掛け算」で
- 増えたお金の分だけ消費に回し、元本は運用資金として残しておこう
貯金だけをしていては、インフレに負けてしまう 文・佐々木 愛子(ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員二種、相続診断士)/DAILY ANDS
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