「ボデガ」は食品から生活用品まで何でもそろう小売店で、日本のコンビニエンスストアのような存在だ。店でサンドイッチなどを手作りしてくれるため、市民は毎日のように足を運び、多くの労働者はここで朝食を調達する。
最も人気のある朝食メニューは卵とベーコン、チーズを丸いパンではさんだサンドイッチで、卵価格の急速な値上がりの影響をもろに受けている。
これまでのインフレの影響で、ブルックリンやクイーンズの貧しい地域でも、この朝食サンドイッチの価格は5~6ドル(770~924円)にまで上がっている。チキンオーバーライスなど他のメニューはともかく、このサンドイッチについては、50セントでも値上げしたら客は購入しなくなる、と経営者は苦悩の表情を浮かべている。
労働者側は、このサンドイッチを朝食として半分だけ食べ、残りは昼食用に取っておくという涙ぐましい節約をしている。店側はそれを知っているだけに、値上げができないという。
2022年からの流行で飼育数が急減 供給基準に戻すには長い時間必要
米国では鳥インフルエンザの流行は2022年から始まった。この数カ月、状況は一段と悪化しており、1月に殺処分された鶏は全米で1400万羽にのぼり、前月の1320万羽を上回った。これまでの殺処分により、1月初旬時点で全米の養鶏場で飼育されている鶏の数は約3億羽にまで減った。
鶏肉や卵を適正な価格で供給するには、その国の1人に1羽の鶏が必要だとされている。人口約3億4000万人の米国には約3億4000万羽の鶏が必要であるにもかかわらず、まったく足りない。現時点で鳥インフルエンザが終息したとしても、適正な飼育数に戻すのは1年以上かかるとみられている。
大統領選でトランプ陣営は、バイデン政権の物価高への無策を厳しく非難した。トランプ大統領は選挙戦で「就任初日に物価を下げる対策を講じる」と何度も繰り返していたが、ほとんど何もやっていない。そればかりか外国に関税をかけてさらなる物価高を招こうとしている。そして今度は、民主党が鳥インフルエンザを政治的な攻撃の材料にしている。