そうしておむすびとけんちん汁を供されたおじいちゃんは、入れ歯が流されたから固いものは食えないという。カスミンが作ったおじやを口にして「久しぶりに米食った」と。じゃあこの1か月、何を食って生きてきたのか。
カスミンの作ったおじやの価値を上げるために、これまで配布されてきたおむすびとカップラーメンを貶めるという作業が行われているわけです。それだって、誰かが必死にかき集めて、道なき道を乗り越えて、瓦礫をかき分けて届けてくれたものなのに。
もうね、距離感とかじゃねーわ。市井の人、その営みに対するリスペクトの欠如だわ。
そうして避難所における栄養士・カスミンの「大手柄」「大活躍」「大満足」を演出しておいて、その手柄のすべてを「結ちゃんのおかげやで」と主人公に委譲している。
それを結は「そっか」とか言いながら、玉座でただ悠々と聞いているのです。全部、結様の思し召しなのです。なんだこの人、徳川家康なのかな。これで育児に忙殺されている描写が少しでもあれば「結は結でやるべきことをがんばってる」という印象も出せるんですが、橋本環奈に赤ん坊のウンコを触らせるわけにはいきませんか、そうですか。
みんな玉ねぎになーれ
一方そのころアユはナベべ(緒形直人)に「ギャルにしかできないことをやれ」と言われて、唐突に岩手出身のギャル友・アキピー(渡辺直美)を思い出します。
ここも変なんだよな。ナベべがチャンミカに「納品を遅らせたい」と連絡をして、アユが「具合でも悪いん?」と訪ねてくる。ナベべ、仕事にブランクがあるのはわかるけど、取引先に納期の遅れの連絡をする際に「東北に送る靴を手配するから」って言ってないのは不自然すぎるんです。
ナベべが口下手で何も言わなかったとしても、チャンミカが「何かあったんですか?」と聞き返すでしょう。こういうところで、アユ、チャンミカ、ナベべの3人が結んでいたはずの人間関係がリセットされるんです。この3人の関係も確か「結さんが結んだ」とされていたはずですが、ドラマ自らがその「人の結び」を断ち切ってくる。こういう迂闊さもいちいち引っかかってくる。