海沿いの家が、じゃないですよ。気仙沼は内陸まで津波が入ったことで大きな被害が出たんです。それと重油による大規模火災。震災直後に気仙沼に入った人間から「海沿いの家が」なんて説明は絶対に出てこないよ。気仙沼の被害が甚大だった理由は「海沿いだけじゃなかった」からなんだよ。フィクションだってことはわかってるけどさ、「見た人」を描くなら「見たはずのもの」を語らせなさいよ。資料読めよ。マジでやべーよ、こういうとこ。
栄養士のドラマだから、避難所で栄養士がどう動いたのかにフォーカスが当たるのは別にいいと思います。「メシなんて後だ」のおじさんも、まあ極限状態だし、そういう人がいたかもしれない。物資倉庫に忍び込んでミルクを探すくだりも、あれは火事場泥棒という行為なわけだけれども、悪意はないだろうから別にいい。
震災の発生から1か月後まで、主人公の結が何もしていないんです。何を感じたかもわからない。
震源地に近い夫の実家も「被害がない」の一言で片づけ、勤務先の支社も「総務が対応」で片づけ、この間の結についての説明は「産休中」のみ。親友のなっちゃんがボランティアに出発すると聞いたとき、何を思った? どんな会話をした? いつ、どんな会話を経て実家からアパートに帰った? 震災後、翔也と初めて顔を合わせたとき、翔也はどんな顔をしていた? この1か月、夫婦で何を話した? 知ってるか、原発が爆発したんだぜ?
主人公が何を感じて、何をして、何をしなかったのか、それを描くつもりがないのに震災を入れ込んできたことがムカつくわけです。さんざん人助けの人だってアピールしてきたんだからさ、乳幼児の育児と、どうしても被災者のために何かしたいという「米田家の呪い」と、その2つの思いに引き裂かれていたはずの主人公の1か月を見せろって話です。
面倒なことは全部飛ばしてる。しかも、ろくに取材もせず、適当に被害状況を説明してる。
そして何より絶望的なのが、今までは悲劇を展開に利用していたんですよね。ハギャレンへの加入も、翔也との結婚も、管理栄養士との出会いも、すべて悲劇がきっかけで話が転がっていた。結の環境や心情に変化を及ぼしていた。