それでも、アユはアユなりに落ち込んでるみたいで、昼間に伏し目がちで商店街を歩いていたら、とんでもないナレーションが飛び込んでくる。
「それから2週間ほどがたったころ──」
うわあ! って、思わず天を仰ぎましたよ。ととと飛ばすんかい! と。
今度はアユが大荷物のなっちゃんと鉢合わせして、なっちゃんは「これから東北に行く」と言う。
「……とうほく?」
東北だよ、東北に決まってんだろ。もうむちゃくちゃだよ。
あのね、アユに関していえば、こういうときこそ「ギャル」を描きなさいよ、と思うんですよ。
クラブで酒と音響と照明があれば人を救うことができるけど、こういうときに何もできない、ボランティアに行く気にもならないんだったら、何が「ギャル」なのよ。「ギャル」を主題に置いたドラマで震災を描くなら、そのポジティブで破天荒な「ギャル」が未曾有の大災害とどう向き合うか、どういうマインドに至るのか、そこを描かないでどうするのよ。
震災直後はそりゃわかりますよ。フラッシュバック、トラウマ、大いに結構です。2週間たってるんでしょ? マキちゃんならどうしたか考えたりするでしょう。マキパパであるナベに会いに行ったっていい。少なくとも、このドラマの作り手はアユというキャラクターを震災によって傷つけたわけです。傷つけておいて有事にその傷を描かないのは、その傷をありありと描くことよりずっと残酷な行為です。傷を描かないことは回復を描かないことだからです。傷つけっぱなしだからです。向き合いなよ。イモ引いてんじゃないよ。
地震から1か月頃
結局、結もアユも何もしないまま1か月。気仙沼帰りのカスミンが訪ねてきます。
「どうしても、結ちゃんにお礼が言いたくて来たんよ」
もうこれはいい。結が何もしてないのに周囲が勝手に感謝してくるのは、いつものことだ。
カスミンは気仙沼の状況について「津波の被害が大きくて、海沿いの家がようさん流されて、大勢の方が亡くなった」と説明します。