さて、今週の第1位も、木原誠二副官房長官の妻の疑惑を連続報道している文春に捧げたい。先週、週刊誌史上最大のスクープかもしれないと書いた。現職の大物政治家(私はそうは思っていないが)の愛人と認知していない子供の話を追及し、ついには木原が「自分の子どもだ」と認めざるを得なくなったが、それだけでは終わらないのが文春の凄さである。
私の単なる推測だが、木原の妻に「殺人の疑惑」という過去があると何らかの形でバラしたのは、愛人ではないかと思う。なぜなら、万が一、本妻が木原と離婚ということにでもなれば、一番得をするのは愛人だからだ。だが、これは牽強付会にすぎるだろうな。
文春の報道に怒った木原は、「事実無根」だと訴えると吠えたが、今この原稿を書いている時点では、訴えたという情報はない。私は、妻への名誉毀損では訴えとしては弱いような気がする。徹頭徹尾、文春の報道は事実がないのに書きたて、世の人心を惑わした罪により、文春の廃刊を求めるぐらいでなければ、自分のアリバイ工作、訴えましたよというアピールだけだと思われるに違いない。 文春も、もしこれが捏造記事なら休刊せざるをえまい。木原も文春も、政治生命と週刊誌という媒体の生き残りをかけた「死闘」であるはずだ。
文春の今週の読みどころは捜査を再開した刑事たちの生の声が「録音」されていたというところである。事件から日にちが立っていることに、女性刑事は亡くなった安田の両親にこう語っている。
「捜査は尽くされていないので、少なくとも。結果はどっちに転ぶか、ちょっとそれこそ捜査をしてみないと分からないんですけど、でも終了しているとは思えないので、それをちょっと再開させていただきたいと思っています」
彼女は、両親に、安田のへその緒を持っているかと聞く。DNAが取れるものを捜しているのだ。さらに2018年10月には刑事の一人が安田の友人に聴取しているが、これも録音が残っている。
「刑事『十二年経って「もう一度捜査をきちんとしよう』と。まず『事件性があるのではないか』ということで捜査をしている」
その友人が残された子供たちへの影響を心配すると、
「刑事『我々が調査をする糧といいますか、それは当然被害者なんですよね。亡くなった方の無念。ここで死ぬはずがなかった。明日があった。未来があった。あの日、あのときにそれが奪われてしまった。こんな無念なことはないと思うんです。その無念を晴らせるのが我々警察しかいない』」
これだけの意気込みで臨んでいた刑事たちが、突然、捜査の縮小を命じられたのだから、捜査幹部の一人は、先週号発売後に、文春に対してこういったという。
「記事に間違いは全然ありません。『書いてもらいたい』というのは、みんなが思っていることだから」
木原の妻の事件当時の愛人だったYに文春は再びインタビューしている。
――記事に対して、木原さんは事実無根と主張し、「刑事告訴する」と。
「そりゃそうだよね。俺なんかが普通に物事を考えれば、抹殺されるよ。それくらい(木原氏とは)石ころと雲の上。それくらいの力の差があるよ。俺らがいくらヤンチャしたって、そういう力じゃないから。簡単にどうのこうのできる案件でもないよね」
――小誌が報じた内容について大手メディアは一切扱っていない。
「……でも、捜一の人間も言ってたよ。『デカすぎて、相手が』って。そりゃそうだよ」
でも、川の中の石ころでも、土手を削って穴をあけ、決壊させることができるかもしれない。政治権力が何だ、選挙に落ちればただの人じゃないか。警察は怖いが、政治家なんて恐れるに足らず。木原程度の政治家に恐れ入って何も書かない大メディアなんて、無いのと同じじゃないか。
木原の妻が殺人犯だと報じろというのではない。そうした「疑惑」が政治家の妻にかかっていて、その政治家には愛人がいて、子どもまでなしているのだ。木原の地元の有権者はもちろんのこと、国民の知る権利に答えろ! そう叫びたい。文春の次なる一手を楽しみに待ちたい。(文中敬称略)