今回は結自身が体調を壊すことになるわけですが、バナナもプリンも食えなくなるまで病院に行かないのもまた『おむすび』メソッドです。これを美談として扱っているわけですが、実際には、食欲がない、体調が悪い、その症状の原因がわからないという状態で社食の厨房に入るのはテロに近しい行為ですよ。そういう社会常識のなさだったり、栄養士という仕事についての無理解もまた、ここで披露されることになります。
徹底的に、このドラマの悪いところが積み重なっていく。今日はそういう回でした。
「それは妊娠しているからです」
これ最悪じゃない? ヒロインの妊娠発覚をほかの病気を抱き合わせてやる必要ある?
「それは妊娠しているからです」
顔をしかめたまま微動だにしない結さん。喜べない家族。いったい何を見せられているのか。
翌日、目を覚ました結は「お腹に赤ちゃんがおるのに、ご飯も食べんで、ずっと無理して」とセリフで状況を説明しながらハラハラと涙を流すわけですが、泣いてる意味がわからんのですよ。発熱の原因は腎盂腎炎だった。吐き気は懐妊による悪阻。それがわかって、目の前には母親がいる。
普通に考えてさ、妊娠の話をするもんでないの?
ママ「そっか、結もお母さんになるのか」
結「私ダメだわ、最初っからこんなんじゃ、ちゃんとお母さんになれる自信ないな」
ママ「私も全然ダメだったわよ、アユを妊娠したときなんてまだ18だったし」
みたいな話をするもんじゃないのかね。ここの「自分が初めて妊娠したのに、赤ちゃんを最優先に考えてない」感じ、それより自己憐憫に浸ることが優先されてしまう感じ、実に気味が悪かったです。
この気味の悪さって、なんか「妊娠して喜ぶ橋本環奈」という構図を意図的に避けた感じがするんだよな。
そう考えると、結という人はこの劇中で、本当に心から喜んだことが一度でもあっただろうかという思いに至るわけです。
パラショーは楽しそうだったけど、あれは「気が進まないけどやってみたら楽しかった」だし、糸島の逆プロポーズも翔也の悲劇を下敷きにした切実なものだったし、ナベがおむすび食べてくれたときも、喜びというよりは何か責任を果たした充実感みたいな顔をしてたし。