交渉の目的を忘れず、時間をかける

そのためには出来るだけ時間をかけて交渉する。相手と時間を過ごせば過ごすほど相手への影響力は増し、相手の自分に対する影響力も増す。つまり時間をかければかけるほど、交渉が成功する可能性も高くなるが、逆に相手に跳ねのけられるリスクも高くなる。

交渉を優位に進める上で、一瞬たりとも「目的」を忘れてはいけない。交渉中が長引くと、交渉には直接関係のない様々な雑念が入りがちだ。新規契約の交渉をしているはずが、相手を和ませようとうっかりゴルフの話で盛り上がってしまったり、子どもをなだめて勉強をさせるつもりで15分だけゲームを許可したはずなのに、気がついたら1時間も過ぎていた−−といった経験はないだろうか?

交渉を脱線させないために活用すべきは、前述した「自己認識」「自己管理」「社会意識」 だ。これら3つのスキルを十分に活用すれば、相手を説得あるいはやる気にさせる、対立をより効果的に管理する、最大限の恩恵を受けることが出来るだろう。

交渉術を用いたボス氏の成功例

ボス氏がこれらの交渉術を活用して、成功させた交渉からひとつ例を挙げよう。1998年、ニューヨークのハーレムで武 装した男が女性を人質にとりアパートに立てこもった。犯行グループは数日前に、既にライバルのギャンググループと抗争を起こしていた。SWAT(米国の自治体警察における特殊部隊)が背後に待機する中、ボス氏は6時間にもおよぶドア越しの交渉の末 、犯行グループに人質を解放させ、自主的にアパートから出て来させることに成功した。負傷者も出ず、銃が発砲されることもなかった。

交渉の間、犯行グループがボス氏の語りかけに応じることは一切なかったため、ボス氏は「実は室内が空っぽなのではないか?」 という疑念すら抱いたという。

ボス氏は交渉に辺り、「深夜のFM放送で流れるDJの声のトーン」を用い、「そこから出て来たくないようだね」「ドアを開けたら最後、私たちが銃をぶっぱなしながらなだれ込むと心配しているのかい?」「刑務所に戻りたくないだろう?」などと、心理的に強く影響するようなセリフを繰り返した。

犯行グループは後に、「捕えられたり銃で撃たれるのは嫌だったが、 ボス氏は我々を落ちつかせた」「最終的にはここにいても逃げられないと分かったから降伏した」と語った。

粘り強さと熟練したスキルが、交渉を成功に導いたことは疑う余地がない。「色々な交渉術を練習してもやっぱり苦手」という人は、人との関係の築き方から見直してみてはどうだろうか。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online

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