一方で、新作の発表時に過去の問題に言及した例もある。『全員死刑』などで知られる小林勇貴監督は、2024年10月、“頂き女子りりちゃん”を題材にした短編映画『頂き女子』の製作の発表時に、2017年の映画『ヘドローバ』で成人男性の俳優が子役を殴打する過度な暴力演出があった問題について、「当時未成年の俳優に対して配慮に欠けた判断」があったとし、責任を感じたことから「撮影現場での事前の確認、透明なコミュニケーションを徹底するために、アメリカで映画制作者たちにインタビューを敢行し、そこで学んだ映画制作現場の安全管理や、チーム内の対話技術を日本の現場でも導入するよう日々励んでいます」と問題に向き合う姿勢を示していた。
また、過激な性暴力シーンを映した2024年の映画『先生の白い嘘』では、主演の奈緒からインティマシー・コーディネーターの起用を希望されたのにも関わらず、三木康一郎監督が「すごく考えた末に、入れない方法論を考えました。間に人を入れたくなかったんです」とインタビューで答えたことが大バッシングを浴び、公開初日舞台あいさつで三木監督は謝罪し、原作者の鳥飼茜からの手紙が読み上げられた。
◆「何も言わない」「何も変わらない」で通るはずがない
映像作品業界における問題に向き合う状況は、過渡期と言うのも早すぎるが、変化は少しずつ見えてきてはいる。だからこそ、過去に1人の元女優を自殺未遂にまで追い込んだ監督が復帰するばかりか、その新作の発表の際に「何も言わない」「何も変わらない」で通るはずがない。
なお、『渇き。』はヌード強要の報道後に、ほとんどのサブスクリプションサービスで配信が停止しており、それは送り手側が問題を認知している証拠ともいえる。ヌード強要の当該シーンが映像として残されており、元女優への二次加害を防ぐためにも当然の措置でもあるが、それでも同作の送り手側からの声明は出されていないのだ。