――東南アジアには「児童婚」の問題もある。貧困層ほど早く結婚し、出産も早いため、学校に通うことができず、負の連鎖が次の世代にも受け継がれることになってしまう。とりわけモン族の児童婚率は高く、2人に1人は未成年で結婚しているという。児童婚には女性から就学や就職のチャンスを奪ってしまう側面もある。

伴野 最後まで嫁さらい婚を受け入れなかったジーのようなケースは、モン族ではまだまだ珍しいと思います。他の社会を知らない彼らにとっては進学や就職を優先するのか、それとも民族の存続を重視するのか、簡単には決められない問題でしょうね。

 モン族のひとりの少女が、「嫁さらい」という風習を経験し、大人へと成長していく姿を鮮やかに映し出す『霧の中の子どもたち』。スマホやSNSといった最新のツールによって、ベトナムの少数民族、そして非婚化・晩婚化が進む日本も含め、アジア全体の結婚観や家族制度が揺れ動いている時代なのかもしれない。

(取材・文=長野辰次)

『霧の中の子どもたち』はアジアンドキュメンタリーズで配信中

『霧の中の子どもたち』
製作国/ベトナム 監督/ハー・レ・ジエム 編集/スワン・ドゥビュス/2021年製作/作品時間92分

「アジアンドキュメンタリーズ」