昨日はちょっといろいろ展開が激しすぎて見逃していたところもあったので、改めて見直してみたんですね。

 ライントラブルが起こって100人中10人のモニター予定者が来れなくなった。開発の女性課長はブチ切れていますが、一緒に来ていたおじさんは「ほかの営業所でもアンケートを取っているから茨木は90人でいい」と言っている。その開発側の提案を「待ってください!」と遮って翔也(佐野勇斗)は社内を駆けずり回ることになるわけです。この時点で、翔也の行動は別に仕事上必要なものではなく、単なるひとりよがり、自己満足になっています。

 人事部に断られ、帰宅しようとする社員に断られ、なるみ姉さんも電話で人集めをしていて、そこで映し出された時計が16時30分。リミットは17時30分。毎晩、神戸から梅田までを走破している健脚の翔也くんもそろそろバテてきて、今日につながっていました。

 そして今日の放送分、その17時30分に野球部を連れて戻ってくるわけですが、この人、1時間以上社内を走り回っていたことになります。

 その「走る翔也」は、執拗に描かれました。とにかく必死なのである。責任を果たそうとしているのである。そういう描写です。単なる自己満足なのに。

 そして野球部がぞろぞろと入ってくると、翔也は結(橋本環奈)と目を合わせて、微笑み合う。それはいい。

 あのブチ切れていた女性課長が同僚のおじさんと目を合わせて、とってもうれしそうにしているんです。「あの子、やってくれたわね」みたいな顔して。ああ、こういうところだなぁと感じるわけです。

 結と翔也が未熟ながら必死でもがいている。それが周囲の大人たちに評価されていく。そういう物語を作ろうとするとき、評価する大人側の基準が、視聴者の考えるハードルと大きくかけ離れている。「野球部を連れてきた」という翔也の行動の価値が、常識とかけ離れている。

 あの女性課長のうれしそうなリアクションは、「翔也が野球部を連れてきたから炊飯器の開発が成功する」と確信した顔です。「翔也が野球部10人を連れてこられなかったら、炊飯器が開発できないところだった。社運をかけたビッグプロジェクトが頓挫するところだった」。そういう顔なんです。