このシーンで表現されたのは、結が翔也のことをまったく、一切、ちゃんと見ていなかったという事実です。それと、なぜ言ってくれなかったのかという他責思考ですね。

『おむすび』第9週「支えるって何なん?」で、結は誰かを支えることについて学んでいたはずなんです。相手の状況や気持ちを注意深く観察して、相手が望むこと、相手の役に立つことを真剣に考える。サッチンと無理やり仲直りさせてまでドラマが結に叩き込んだ「支える」という言葉の意味を、もう忘れてるんです。

 主人公がバカなのはいい。学ばない人間であることが御し難いのです。

 翔也のこともちゃんと見られない、大切にできないなら、この人は何が大切なのでしょう。その人物の「もっとも大切なもの」を描くことは、その人物そのものを描くことです。ここが描けていないから、結という人物に共感できない。

 翔也についてはもういいです。なんで医者に早く行かないのかずっと疑問でしたが、どうやら痛覚もないみたいだし、たぶんこれホンモノのカッパなんでしょ。頭のお皿を隠すためにカツラかぶってるのかな。ホンモノのカッパの心中など察せるわけがありません。とりあえず新聞記者の川西くんは今回の星河野球部の管理不行き届きを一部始終記事にした方がいいよ。来年以降、有望な選手が星河に来たら、また悲劇を繰り返すことになる。

心変わりを責めても

 コック長の立川さんは彼氏がケガした結に同情したのか何なのか、新しいレシピの作成を指示してきます。いわく「料理をレシピにしてみたら、味が濃いと俺も思った」。

 レシピにしてみたら、味が濃いと思った。

 ちょっと何を言っているのかわかりません。レシピにしてみたら基準摂取量に比べて塩分が過多であることがわかった、ならわかるけど、「味が濃いと思う」は主観的な感覚でしょう。セリフの使い方が雑なんですよ。まあ心変わりすることは目に見えていたから展開自体はいいんだけど、このへんの論理の飛躍もなぁ。