ちゃんと仕事してた、お医者さんごめん!
なぜこういう勘違いが起こったかというと、これまでの『おむすび』における説明不足やジャンルへの理解の浅さから「どうせちゃんと説明してないんだろ」とナメてしまったことも事実ではありますが、それ以上に、翔也が「投げていた」からなんです。
結(橋本環奈)をキャッチボールに誘った翔也は、ヘロヘロのボールを投げながら、「もう投げられない」と言います。そう言いながら、10メートルくらい投げている。
これ、肩をやったピッチャーにとって、「投げられる」か「投げられない」かでいえば「投げられる」状態なんですよね。重度の関節唇損傷と腱板損傷だったら、日常生活だってままならないですよ。ましてや肩を回してボールを投げるなんで動作ができるわけないの。ヘロヘロだろうがなんだろうが10メートルくらいのキャッチボールって、肩を壊した人にとってはそれくらい難しいものです。
2人にキャッチボールさせたらエモーショナルがシーンが撮れると思ったんでしょう。しかし、そのエモさと引き換えに、また野球への理解の甘さ、浅さが露呈しています。
綿密な取材でおなじみの『おむすび』ですが、こんなのそこらへんの野球好きのおじさんに聞いたらわかるくらいの情報なんですよ。野球好きなおじさんだったら、伊藤智仁と斉藤和巳がどれだけ突出していて、野球ファンにどれだけ大きな夢を見せてくれて、その後に何が起きたか、忘れるわけないんだから。「肩を壊す」って言葉の重みが身に染みているんだから。
ともあれ翔也からの告白を受けた結は、「なんで、それ言ってくれんかったん?」と聞きます。ここで思い出したのが、冒頭の『ROCKERS』のシーンです。あのときのジンは優しかったし、結は優しくないんです。
この人、さっきまでプロポーズだーって浮かれてましたからね。ボールの代わりに指輪を投げてくるかも、とか結が思ってたのは、さすがに翔也にも伝わってますよ。言えるわけないんです。