◆「兄になだめられる自分を見ている感覚になってくる」

――映画が直接的なインスピレーションになるというよりは、自分の内面との対話なのですね。

こっちのけんと:そうです。これも兄の出演作ですが、ハガキ職人の話である『笑いのカイブツ』(2024年)という映画が好きです。主人公のハガキ職人も僕の暴走してる感じに似ています(笑)。

お笑いが好き過ぎるがゆえに周りを敵視する。兄がそれをなだめる役だったんです。それを見るとなんか本当に兄になだめられる自分を見ている感覚になってくる(笑)。兄の出演している作品きっかけで自分を客観視できることが多かったですね。

――スクリーン越しにお兄さんの眼差しを感じるわけですね(笑)。

こっちのけんと:そうです。ボロ泣きです。ハンカチ持っていってびしょびしょで帰ってきます(笑)。

――すごいですね。それは弟にしかできない映画体験ですね。『Cloud クラウド』はどうでしたか? ある意味、黒沢監督の演出が自由に暴走している映画ですが。

こっちのけんと:(笑)。純粋にサスペンスというのか、黒沢監督特有のホラーの怖さもありながら、なのに滑稽さもあるという。そんなわけないだろという状況が起こっているのに、見せ方は怖い。でもあっけなさもやっぱりある。

実写なのか漫画的なのか。その塩梅が面白かったです。結果、その面白さはコメディーではないかと。そのあたりが黒沢監督らしさなのかと勝手に考えています。とても好きな作品です。

◆今後目指していきたいのは“攻めた表現”

こっちのけんとさん
――黒沢監督は相対性理論の「FLASHBACK」を演出していますね。黒沢監督が演出したこっちのけんとさんのミュージックビデオが見たいです(笑)!

こっちのけんと:そうでしたね、ひたすら俯瞰の構図で(笑)。もし撮っていただくことになったら、どんな映像になるんでしょう(笑)。『Cloud クラウド』の最後の不気味なシチュエーションのようになってしまうのか。