こっちのけんと:ありましたね! 僕はその言葉を、細かく裏拍を感じなければならないということだと解釈しています。アカペラでたとえると、アカペラはリズム隊が楽器でもなければ、クリップも耳から鳴っていません。みんなで音を感じなくてはならない中で、表だけで感じると絶対にズレてしまう。だから、もっと細かく感じることを繰り返していました。青山監督から兄へのアドバイスで、そうか演技も同じなんだと思いました。
――青山監督にとっては大学の先輩である黒沢清監督の『Cloud クラウド』に主演した菅田将暉さんは今年の名演のひとつだと思います。個人的には、以前黒沢監督の現場で美術スタッフをやっていた経験があり、まさか青山監督作の代表的な俳優である菅田さんが黒沢組に出演したということが感動的でした。
こっちのけんと:えっ、黒沢組のスタッフをやられていたんですか(笑)。面白いつながりですね。そうですね、兄にとって青山監督は大切な存在でしたから。
◆「精神的な病気を受け入れる最後の一押し」になった映画作品
――映画俳優としての菅田さんをどのように見ていますか?
こっちのけんと:兄が俳優ではなかったら、ここまで映画を見ていませんでした。兄が出演している作品は、ちゃんと心打つものがある。特に僕にも刺さるものが多く、そのおかげでインプットの幅が広がっています。存在としてただただありがたくて(笑)。
――お兄さんが出演する映画に限らず、好きな映画を教えてください。
こっちのけんと:それでいうと、兄の作品になりますが、『銀河鉄道の父』(2023年)という作品です。兄の役柄が、僕が楽曲制作に集中し過ぎちゃっているときの感覚にすごく似ていて。自分の思考や感情が暴走して泣きじゃくったり、自分って客観的に見たらこんな感じかと(笑)。
でもだからこそ作れた作品でもあるので、自分はこれでいいのかもしれない。そう思えました。自分の精神的な病気を受け入れる最後の一押しだったなと思います。