音楽に詳しくないからこそ、できるメロディライン、あるいは自由なコード進行の曲ができることもあると思うんです。「はいよろこんで」は、そうした意味でどんな世代にも聴きやすく、子どもにも聴かれる曲になっているのかなと思っています。
――今はアカペラをやることはありますか?
こっちのけんと:あまりないんですが、やりたいですね。アカペラは、歌がうまい人が集まればいいというものでもありません。それぞれパートのスペシャリストがいて、その人とどれだけ付き添ってきたかで声色の寄せ方みたいなものが違います。
今後アカペラをやるとするなら、新しいグループを作るのではなく、大学時代に4年間一緒にやっていたメンバーをゲストで呼んで共演したいみたいですね。
◆兄・菅田将暉と「お互いに認識していると思う」こと
――1stシングル「Tiny」はお兄さんである菅田将暉さんのことを歌った曲です。これはさまざまなインタビューの場で必ず聞かれていることだと思いますが、同じアーティストとして菅田さんはどういう存在ですか?
こっちのけんと:とても尊敬しています。僕ら兄弟の特性を勝手に分析してみるなら、僕はもともと歌がちょっと得意だったからできているタイプ。兄は得意かというとたぶん不得意。なのに、好きだから極められたというタイプだと思うんです。僕はボイトレに行ったこともなければ、音楽を学んだ経験もない。兄の音楽には絶対に辿り着けない。それをお互いに認識していると思います。
兄は誰にも真似できない努力の先で出せる熱い歌があります。僕は歌うことが得意だからこその内容の濃さと冷たさみたいなものをあわせもっている。アーティストとしての兄をヒントにしつつ、でも真似したらダメだなという感覚があります。
――主演映画『共喰い』(2013年)の青山真治監督が菅田さんに放った音楽的なアドバイスが、菅田さんの俳優人生を変えた言葉として有名ですよね。「お前の芝居はまだ1/4拍子なんだよ。ミュージシャンは1/16まで考えなきゃいけない」と。