アユが「ギャル魂」によって翔也の心を回復させるという流れこそ読めていましたし、期待もしていたんです。
ギャルとは、好きなことを貫くこと。
アユ「ねえ翔也。翔也は野球にまだ未練がある? 野球が好きなんだよね?」
翔也「好きだ……あきらめたくねえ……でも、もう肩が上がんねんだ……」
アユ「治す方法はあるんでしょ?」
翔也「医者のセンセは、経験上、難しいって……」
アユ「チャンスじゃん!」
翔也「……チャンス?」
アユ「ピッチャーって、肩だけで投げるわけじゃないよね。あなた見たところ線も細いし、ほら、お尻だってこんなに小さい。今こそ、下半身強化に専念できるチャンスよ。まずは走り込みとスクワットね。それと股関節の可動域も広げたほうがいいわ。結局、野球だけじゃなくて全部のスポーツの動きは骨盤が基本なんだって、イチローも言ってたわよ」
翔也「でも、肩が治らなきゃ意味がねえべ……」
サッチン「ちょっといいかしら? あのね、翔也くんとやら。スポーツ栄養士の世界と同様、スポーツ医療の世界も日進月歩なのよ。しかも野球選手の治療は成功すれば莫大な利益を生むから、本国アメリカではもっとも研究が盛んな分野なの。あなた、将来はメジャーに進みたいのよね?」
翔也「おめ、誰だ?」
サッチン「あら、会ったことあるじゃない。あ、あのときは私がモリモリの背中に隠れちゃったから、あんまり見えてないか。てへ」
翔也「でも投げられる保証はねえっぺ……」
福岡西高の監督「翔也、久しぶりだな。ちゃんと飯は食っているか?」
翔也「監督!」
福岡西高の監督「高校最後の試合、おまえの彼女がギャルを引き連れて応援に来たあの試合だ。1回表におまえはタイムリーを打っただろう。あのとき俺は確信したんだ。おまえはピッチャーよりバッターが向いている!」
翔也「ばったー……?」
福岡西高の監督「そうか、変化球も知らなかったおまえだから、バッターも知らないか。金属の棒でボールをひっぱたくアレだ! まあ、プロに行ったら金属じゃなくて、木製だがな。ガハハハハハ!」