控除後の「所得割」額で異なる行政サービス

地方公共団体のサービスに所得制限がかかっていることがある。この所得制限の基準に、地方公共団体が住民税についての情報を用いることが多い。

地方公共団体が基準とするのは、収入、住民税の基礎控除後の総所得金額、市町村民税所得割額などだ。

収入に応じて決まるものとしては、就学援助や児童扶養手当が挙げられる。これらを受給できるか否か、受給できても全額か部分給付かが異なる。公営住宅の家賃の算定基礎額にも用いられる。

住民税の基礎控除後総所得は、国民健康保険の保険料の基礎となる。サラリーマン・OLは企業の健康保険組合か協会けんぽに入るので縁がないが、退職して自営業になるなら要注意だ。

控除をすべて使った後に算出された納税額が基準となる行政サービスも多い。市町村民税所得割額を判断基準に利用するものでは、保育園の保険料が代表的だ。自分の子どもの保育料が変更となったら、毎年6月頃に会社から渡される住民税の「特別徴収額の決定通知書」を確認しよう。その通知書の所得割額の欄の金額が保育料の基準となっているのだ。

障害者福祉サービスにも所得割額によって負担が生じることがある。例えば、自分や家族が障害を抱えつつ社会で働こうと就労移行支援サービスを受けようとする場合でも、市町村民税所得割額が16万円以上だと月に3万円以上の負担金が生じる。就労移行支援事業所での軽作業で工賃を得ても負担額に届かないと「お金を払って仕事をする」という状態になる。住民税の納税額が高いと福祉サービスが無料とはならないのだ。

教育の分野でも住民税の所得割額が問題となる。例えば、たいていの高校は月9,900円の就学支援が受けられるが、2018年7月支給分からは、保護者の市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円以上の世帯では支給されなくなる。

生活に密着した地方行政サービスの中には、その地方公共団体への納税額(特に所得に比例する所得割額)で受けられる内容が異なるものがある。自分や家族が何らかの行政サービスを受けられるかどうか、負担なしが当然と思っていたのに思いがけず負担が生じないか、住民税の通知書にかかれた情報が重要となる。

所得税の控除については会社に書類を提出したり、家計の節約術として医療費控除を確定申告で行ったりするので、納税者が意識する機会が多い。一方、住民税は地方公共団体から一方的に納税額を知らされ徴収されるので意識することが少ない。

しかし、住民税は“地域社会の会費”としてその控除額が少ないため課税対象額が所得税より大きい。また住民税の納税額は地域行政のサービスの受給に関わってくる。所得税以上に、行政任せで無関心でいると思わぬ落とし穴があるものなのだ。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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