ただ、そこで確定したわけじゃなくて、最終的に「もう劇場を決めないと押さえられない」ってタイミングで、僕が相方に「本当にやる? お前がやるって言うなら、俺はやるよ」って念押しをして、向こうが「う~ん……やる」って言ったのが決め手になりました。
もし相方が「やらない」って言ってたら、やらなかったかもしれない。だって、30年ぶりに再開するってキツいことでしょ? 今の若い人たちは僕らを知らないだろうし。
――にもかかわらず、もう一度コンビでライブをやろうと考えた理由は?
田口:活動休止後に僕自身がやりたいことをやってきて、もう1回あのときの青春というか、お笑いっていうものを感じてみたいと思ったんですよ。ただ、2人だけで100分ぐらいのライブをやるのは、年齢がいくほどキツくなっていくだろうなと。それで、60歳を迎える前にやっておこうと思ったんです。
今の相方は動きがキレるから舞台で活躍できてますけど、それでも「腰がね」「股関節がね」とか言ってるのを見ると、「そういう年齢なんだな」って思いますもんね。小浦はちょっと普通の人と違う太り方をしてるから、たぶんテンションでライブやったらハァーハァー言いながら早替えするだろうなって想像するし。
あと、コンプライアンスが叫ばれる時代に、今僕が感じていることを組み込んだ実験的なネタを披露してみたい気持ちもあって。最終的にやらない可能性もありますけど、“ライブだからこそできるもの”を模索して、できる限り面白いライブを作り上げたいと思ってるんですよね。
<取材・文/鈴木旭 撮影/鈴木大喜>
【鈴木旭】
フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。著書に『志村けん論』(朝日新聞出版)がある。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」