「コーヒーをよく飲む人は、まったく飲まない人よりも健康だ」と、いわれているのをご存知でしょうか。しかし、どんなコーヒーにも同等の健康効果が見られる訳ではなさそうです。

本記事では、ドリップコーヒーの歴史に加え、ドリップコーヒーがわたしたちの体にどのような影響をもたらすのかご紹介します。

ドリップコーヒーの歴史

ドリップコーヒーが登場したのは、18世紀初めのことでした。1710年、フランスでネル袋が誕生します。それまでコーヒーといえば、煮出したコーヒーの上澄みを飲むのが一般的でしたが、ネル袋の普及により、格段に口当たりが良くなったドリップコーヒーが広まることになります。

1908年には、ペーパーフィルターを使用するペーパードリップシステムが考案されることに。ドイツのドレスデンに住んでいたメリタ・ベンツ夫人が、「もっと手軽においしいコーヒーを淹れたい」という想いから、ペーパーフィルターが生まれたといいます。ペーパーフィルターで濾されたコーヒーは余計な雑味が消えて飲みやすく、飲んだ後の片付けも簡単。1912年には本格的に生産が開始され、ドイツのみならず世界中で知られるようになりました。

ドリップコーヒーを飲むべき理由とは?

コーヒーをよく飲むという人なら、味を追求するだけに止まらず、益も知った上でコーヒーをチョイスしてみては? ここでは、ドリップコーヒーを飲むとどんな良い効果があるのかについてご紹介します。

一番健康に良いドリップコーヒー

アメリカ国立がん研究所が、イギリス人50万人以上を対象に10年に渡って行った調査結果が、2018年のアメリカ医師会雑誌に掲載されました。その調査の中では、コーヒーを飲む人のほうが、飲まない人よりも健康で、死亡リスクが低く長生きすることが明らかに。論文では、「日常的にコーヒーを飲んでいるのであれば、種類や淹れ方を問わず、どんなコーヒーでも健康効果は得られる」と、研究者たちは主張しました。

ところが、最新の調査結果によると、ペーパーフィルター等を使って淹れたドリップコーヒーが、もっとも健康に良いということが判明したといいます。スウェーデンにあるヨーテボリ大学のダーグ・テレ教授が、健康な成人男女(20~79歳)約50万人を対象に、20年間の追跡調査を行った結果、1日1~4杯ほどドリップコーヒーを飲む人たちの死亡リスクが一番低く、まったくコーヒーを飲まない人たちよりも健康状態が良好であることがわかりました。

心臓発作の発症リスクを低減

同研究が明らかにしたところによると、フィルターを使用するとコーヒーに含まれる血中コレステロールを高める物質を除去でき、心臓発作などにかかるリスクを低減することが可能とのこと。一般的に、血中コレステロールが高くなると動脈硬化を招き、脳梗塞や脳出血、狭心症や心筋梗塞などといった病気を誘発する恐れがあります。

コレステロールとひと口にいっても、すべてが「悪」である訳ではありません。悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)の2種類に分けられ、細胞膜の成分として、さらにはホルモンを作る際に必要な脂質成分です。両者のバランスが保たれている間は問題ありませんが、血中内で悪玉コレステロールが増えると動脈硬化を発症するリスクが上がることに。

じつは、フレンチプレスで淹れたコーヒーやトルココーヒーなどの煮出しコーヒーの沈殿物や上澄みの中には、中性脂肪や悪玉コレステロールを増やす物質のカフェストールやカーウェオールが含まれてるのだとか。テレ教授のチームが行った調査では、フィルターで濾さないコーヒーを好んで飲んでいた60歳以上の男性は、ドリップコーヒーを飲む人たちよりも心疾患で死亡するリスクが高かったといいます。