現代社会を生きる大人と子どもの姿
この映画では、親と子ども、教師と生徒といった、大人と子どもの関係が描かれましたね。今作にはどのようなメッセージを込めましたか。
ハウスナー:今作には特にメッセージを込めるつもりではありませんでした(笑)私たちフィルムメーカーは、ただある観察、あるショーをリリースするだけです。特に私の映画に関しては、いつもどのように見るかを観客に委ねています。観客それぞれが考えることは違うはずですから、私たちが先にジャッジを下すことはしません。「どのようなメッセージを込めたか」という質問に答えるなら、「あなたの頭の中で自由に考えて、信じて、解釈してみてね」というのが回答になるかもしれません。
今作において、個性的かつリアルな学生たちというキャラクターは非常に重要なポジションにいますね。今作における若手俳優たちの印象はいかがでしたか。
ハウスナー:私は初めて演技する俳優と仕事をするのが大好きなんです。これまでの映画でも頻繁に、初演技の俳優を起用してきました。これまでは大人でしたけどね。今作についてはキャスティングに数ヶ月かけて、若手俳優に知識・技術を身につけてもらいながら、彼らとの関係を築き上げていきました。リハーサルなどを通して、キャラクターとともに彼らの演技の技術も磨き上げていったのです。いざ撮影しようという時には、彼らは立派なプロフェッショナルになっていましたよ。
人は他人の評価を気にしたり、自分に自信がなくなっていたりする時、他人の強い言葉や信念に揺さぶられがちです。今作はカルトに傾倒する人々の繊細さや、カルトにハマるきっかけを描いている側面もあると思いますが、そういった部分についてお話いただけますか。
ハウスナー:今作を素敵に解釈してくれましたね。思うに、孤独な人は支配的な人の影響を受けやすいと思います。しかし、その“孤独”というのも無限にあるパレットに乗った一色に過ぎません。孤独でなくても支配される人は支配されますから、孤独だと操られるという単純な話ではありません。
ハウスナー:今作でも描いたとおり、若者は常に何か特別なものを求めていて、何かにかかわりたいと熱望している傾向にあります。私はそれがネガティブなことだとは思いません。人生に何かを熱望する力が、世界に貢献する何かを生み出すこともありますよね。しかしその若者特有の理想主義がミス・ノヴァクに結びついたことで、今作では悲劇が生まれていくわけです。何が原因かって?ひとつではありません。いくらでも理由は探せますよね。ただひとつ言えるのは、大人と子どもの関係は非常に重要だということ。大人の役割は子どもにしっかり気を配り適切なケアを施して有害なものから守れる状態にしておくことです。