――『ビューティフルからビューティフルへ』からも、絶望と死のにおいを感じました。でも、今日の取材で、日比野さんはずっと笑っていらっしゃいますよね。
日比野:それは全然気づかなかった(笑)。でも、町田康さんが『ビューティフルからビューティフルへ』を「反転するエネルギー」とおっしゃってくださったんです。死について引っ張られるパワーが大きいぶんだけ、反転しているものが絶対あるから。だから私って、たぶん“めっちゃデカい逆張り”なんですよね。
私は人間にとっての“ゴール”って、死ではなく美しさだと思っているんです。小説でも同じで、そもそも「ビューティフルからビューティフルへ」は自分の人生の標語にするくらい好きな言葉だったし、自分の“ゴール”は「美しさ」という言葉にもう決まっているから。だから私、明らかに矛盾しているんです(笑)。だからこそ、無理やり反転させる必要があるんだと思うし、その過程をたどって書く小説はきっとおもしろいものになるはずです。
――最後に、日比野さんが「美しい」と思うものって、なんですか。
日比野:アンドレ・ブルトンが『ナジャ』の最後の一文で、「美とは痙攣的なものだろう。さもなくば存在しないだろう」と書いています。美を定義するのは難しいことだけど、でも、それは私にとっていちばん納得できるものでした。2作目の小説『モモ100%』も、ゴールは「美」にしようと考えて書きました。私にとっての最後は必ずそうでありたいんです。