記者が電話を掛けると、出てきた相手は、声音は幼く、やさしく、丁寧に教えてくれたそうだ。

――短時間で稼ぐには。
「そうなるとタタキが一番稼げますけど、運も絡んでくるので、あまりお勧めできません」
――タタキをやるなら事前にリストとか用意してくれるんですか。
「もちろんターゲットは用意しますけど、いざ行っても何も出てこない可能性もあります」

 逮捕された時のアドバイスまでしてくれたそうである。

「警察は『携帯見せないと出さない(釈放しない)ぞ』とも言ってくるんですよ。でも携帯の中身を見せなきゃいけないルールはないので、それも無視で。強盗で捕まったら、強盗のことしか言わなくていいですからね」

 だが、強盗で捕まったら警察を無視しても、釈放は無理だろう。これは、「闇バイト」のことを白状されると困るから、そういっているに違いない。

――タタキをやるにしても、人殺しまではやりたくないんですけど……。
「正直、殺すか、暴行で終わるかは、そこの家主さん次第なので。別に、皆さん最初から殺すつもりはないですからね。やむを得ない場合ですよ」

 そうか、大人しくしてカネやキャッシュカードを渡し、暗証番号を教えれば、命だけは助かるのか。

 今、防犯グッズがどこでも売り切れで、手に入らない。護身用のブザーや誰かが来るとライトがつく防犯カメラ、ガラス窓が割られた時に大きな音を出すグッズなど、手に入れたくても品薄だ。

 いっそ、家の前に5万円ばかりぶら下げて、「持って行ってください」と書いておくか。

 景気が悪いせいか、どんどん物騒な世の中になっていくようである。

 さて、薨去は「こうきょ」と読み、皇族・三位(さんみ)以上の人が死亡した時に使う。

 私も長く編集者をやってきたが、この言葉を使ったことはあまりなかった。

 11月15日、三笠宮百合子妃が101歳で薨去された。実に大正、昭和、平成、令和の時代を生きてきた人だった。