赤石 栗山のセリフで「僕は真実しか書きませんから」ってありましたが、ちょっと待って、「真実って何ですか」という疑問は僕たち記者、書き手にも常にあります。
誉田 物事は見方によって変わりますからね。古い話で恐縮ですが昔のプロレスで力道山とフレッド・ブラッシーの生中継を見てお年寄りがショック死したっていう有名なエピソードがあります。これも亡くなったのは事実でも、過激な技の掛け合いでショック死したのかもしれないし、もしかしたら力道山が逆転勝利したことに興奮して亡くなったのかもしれない。
何が言いたいかというと、殺人事件の裁判でも重視されるのは「殺意の有無」であるように、真実って結局は人の心の中にしかないんじゃないかなと思うんです。じゃあその真実に対して記者はどう向き合うべきかといえば、記者が知り得たものの中で、これこそが真実であると信ずるに足る記事を書くしかない。それが記者の矜持であればいいなというふうに思うんです。
赤石 記者をやっていて、取材で知りえたことを書くのは当然だし、人を傷つけることになるっていうのもすごくわかるんです。でも、やっぱり書くことで誰かを助けることができるなら、という気持ちもすごくある。別に週刊誌記者がやっていることはホワイトだとは思いませんが、世間ではやっぱり飛ばし記事も書くブラックなイメージで言われることが多い。ドラマではその葛藤や違いをリアルに描いてもらえたのは、個人的にもうれしかったです。
誉田 主人公の栗山は過去に誤報を書いたことがトラウマになっていて、その過去とどう向き合うかが物語のベースラインになっています。ジャーナリズムとか正義とはまた違った理由で行動するところも見てほしいですね。
小説の映像化とオリジナル要素
赤石 もう一人、登場人物で印象的だったのがブラックジャーナリストで哀川翔さん演じる園田芳美です。現実にも有名なフリーの芸能ジャーナリストがいるんですけど、原作に出てくる「カニ◯ンのような拳」なんて描写がその人にそっくりで、まさかあの人のことじゃないかと記者仲間でも話題になったんですが。