◆“励ましの人”多部未華子

 キッチンに立つゆくえの側に夜々が寄ってくる。袖を引っ張る。まるで子どものような仕草。夜々はゆくえを母親に見立てている。わずかな仕草から、これはただ事ではないと思ったゆくえは、彼女の背中をさすってやる。

 なんだろう、多部未華子のこの母親感。すごく優しげだけれど、すごく心強い。側にいてくれるだけで心強く感じられる。

 青山真治監督作『空に住む』(2020年)でも、多部は岸井ゆきの演じる後輩が破水し、泣き言を吐露する場面で、力強く鼓舞していた。

 かといって無責任に相手を肯定するわけではない。このあたりの塩梅というか、情感がほんとうに絶妙に表現されている。“励ましの人”多部未華子の魅力があふれる。