2人はこれまで「男なのにメイクをする」「女なのにメイクをしない」と言われてきたという背景があり、この対象的な2人が友情を築いていく要因として、お互いにそのことをわざわざ指摘しないという部分がある。「男なのにメイクするって言わないんだね」「女なのにメイクしないって言わないんだね」という部分で心の距離を縮めるシーンは、いかに2人がそうした周囲の言葉に傷ついてきたかを想起させる、いい場面だった。「メンズメイクの需要はあっても、何から手を出したらいいかわからない男は多い」という指摘を、普段メイクをしない頼子がするというのも説得力のある展開で、30分枠ながら過不足なくストーリーが進んでいるのも好印象。

 好評を得ている深夜ドラマでは、小野花梨と風間俊介のW主演となるテレビ東京系ドラマ24『初恋、ざらり』もよく名前が挙がる作品だ。こちらも人気マンガの実写化で、軽度の知的障がいと自閉症を持つ女性と、アルバイト先の心優しい先輩男性との恋愛模様を描く。求められると体の関係に応じてしまい、「自分はコレでしか役に立てない」と苦しみ、しかし「私にももっと役に立てることがあるはず」と願うヒロイン・有紗を小野花梨が、その有紗との距離を縮めながら同じ職場内での交際や年の差があることに葛藤してしまう男性を風間俊介が演じている。“普通”を求める有紗が置かれている状況は観ていて非常に辛く、観続けるのが苦しいという人もいそうだが、実力派俳優たちが繊細に内面を表現し、惹きつけられる良作だ。

 6月28日スタートで早くも終盤に差し掛かっているのが、ジャニーズJr.・井上瑞稀(HiHi Jets)主演のテレビ東京系「ドラマチューズ!」枠の『なれの果ての僕ら』。同窓会のために集まった四ノ塚小学校元6年2組の27人が、同じクラスだった夢崎みきおにより監禁されてしまうというデスゲーム的な内容で、『アルプススタンドのはしの方』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』といった映画の監督で知られる城定秀夫が演出・脚本で関わっていることも話題だ。みきおを演じる犬飼貴丈の怪演もさることながら、みきおに翻弄される生徒たちには、大河ドラマを始め演技経験の豊富な井上だけでなく、“学園ドラマ”らしく大原櫻子、吉田伶香、工藤遥、大原優乃、ゆうたろう、菅生新樹、新原泰佑、西村拓哉(Lil かんさい/ジャニーズJr.)などフレッシュなキャストを取り揃えているのもいい。残酷で辛い描写が多いため、やはり観る人を選ぶタイプの作品だが、テンポのよさと続きが気になる展開でハマる人はハマるだろう。

 また、全4回ということで7月中に放送を終了したが、元Hey! Say! JUMPの岡本圭人ドラマ初主演となった『リズム』(フジテレビ系)もあった。こちらは妻とのすれ違いに悩む主人公が偶然ダンスの魅力に気づき、ダンススクールに通う中で成長を遂げていくというもので、日常生活でも思わず踊ってしまう場面など『Shall we ダンス?』を下敷きにしたような印象もあった作品だった。一方、8月3日にスタートしたばかりなのは、大原櫻子とTravis Japan・松田元太のW主演作『結婚予定日』(毎日放送)で、『白夜行』『神様のカルテ』といった映画や今年1月期のドラマ『星降る夜に』などの深川栄洋監督が演出を務めることでも話題。アラサー女性がイケメン後輩から、1年以内に交際相手ができなかったら自分と結婚してほしいと提案され、“社内婚約状態”になって距離を縮めたりすれ違ったりするという王道の“むずキュン”ラブコメディだ。