ジャニーズ主演の深夜ドラマが今期は9作

 こうした作品数の増加にともない、ジャニーズ俳優の深夜ドラマ主演もすっかり珍しいことではなくなった。この夏クールでは、ゴールデン・プライム帯の主演作は、Snow Man・目黒蓮の『トリリオンゲーム』(TBS系)のみだけなのに対し、深夜帯となると9作も存在する(した)状況だ。そして特筆すべきは、多くが(今のところ)充実した内容であるところだ。

 フジテレビ系「火ドラ☆イレブン」で放送中の『ウソ婚』は中でも勢いがある。Sexy Zoneの菊池風磨が主演し、元欅坂46の長濱ねる、Snow Manの渡辺翔太らが共演する同作は、累計450万部している同名マンガの実写化作品で、ドSの一級建築士・匠(菊池風磨)が自分には妻がいると偽らざるをえなくなり、幼なじみの八重(長濱ねる)に妻のフリをお願いするという偽装結婚モノのラブコメディだ。TVerのお気に入り登録者数は90万を超えており(※15日時点)、TBSの『18/40~ふたりなら夢も恋も~』や日本テレビの『こっち向いてよ向井くん』といったGP帯ドラマの数々も上回り、今期7位に位置している。深夜ドラマとしてはダントツの1位だ。

 菊池風磨、長濱ねる、渡辺翔太の共演というキャストの強さもあるだろうが、作品としても気軽に見られるラブコメで、30分枠という短さも配信ウケしやすい要因だろう。匠は実は八重のことが昔から好きで、“仕方なく”という態度を装いながらも裏では八重と同棲できることに舞い上がっている……という二面性があり、クールぶったかと思うとニヤけるという菊池の“いいとこ取り”といえそうな役柄も印象的だが、それぞれに本当の想いを秘めているという設定が第4話・第5話で開花。原作ではあまり出番のない進藤(渡辺翔太)にフォーカスし、進藤の秘めた想いを丁寧に描くというドラマオリジナル展開は大きな反響を呼び、ただのラブコメに終わらない魅力を感じさせた。正直、『ウソ婚』で心を揺さぶられるとは思わなかった視聴者も少なくなかったのではないだろうか。

 『ウソ婚』のように意外性があったのは、なにわ男子・大西流星主演の『紅さすライフ』。ジェイ・ストームが製作に関わる日本テレビ系の「深夜ジャニーズドラマ枠」である「シンドラ」の新作だが、大西のコスメ愛を生かしたオリジナル脚本がうまくハマっている。メイク好きの北條雅人(大西流星)と、メイクをまったくしないポストドクターの皆本頼子(井桁弘恵)をメインとする物語だが、てっきりメイクを“サボる”女性を、メイク男子が“説教”するというような内容かと思いきや、「メイクをするのもしないのも個人の自由」という価値観に支えられた作品だった。脚本の松島瑠璃子といえば、昭和後期・平成初期のマンガ『悪女』を再実写化するにあたり、ちゃんと令和の価値観にアップデートさせていた昨年4月期の今田美桜版『悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』にも関わっていたことを思い出した。