◆周りの客の立場だったら、どうすべき?
もう一つ考えてみたいのは、自分が親ではなく、周りの客である時です。隣で知らない子連れ親子が騒いでいる状況に遭遇したことをイメージしてみましょう。
そのシーンが不快に感じる場合、過度な我慢をする必要はないと、私は考えます。その状況をすべて改善できるかは店次第にはなりますが、席移動などの相談をすることは決しておかしなことではありません。どの客も平等に食事を楽しむことを望むのは当然です。
ここでも客の多種多様な状況やニーズに対応できるかは、店の対応能力やノウハウで決まります。つまり今回の鳥羽氏の宣言は、子連れではない人々にも大きく関係するテーマですから、あえて公に宣言をするのであれば、店側の具体的な対策は並行して準備し、説明することが、お客の安心や信頼につながるのではないでしょうか。
最後に、どんなレストランであっても、子どもが笑顔で食事を楽しめることは健やかな成長・食育につながります。多くの人々に考えるきっかけを与えてくれたという点で、鳥羽シェフの発信は有意義だったのかもしれません。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12