「男だからサインしてお金出してやさしい言葉かけて、それで終わり。からだが傷つくこともないし。悪意はなかったんだろうけど。でもそういう意味なの。隠したってそういうことなの」とたったひとりで生んで育てた水季のことをゆき子は思いやる。

「お母さん許さない」と穏やかだけど本気で憤(いきどお)るゆき子だったが、気持ちを切り替えて、コロッケ食べながら「最近孫がほしいなと思っていたとこ」と微笑んだ。

(C)フジテレビ 
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その晩、夏とゆき子はふたりっきりで話す。水季の死因が子宮頸がんだったことを知らなかったこともゆき子に明かす夏。それからゆき子の人生で一番大変だったのは、離婚して再婚するまでの、夏とふたりで生活していたころだということを聞く。

お金も時間もないと気持ちがすり減っていき、なかなか美容院にいけなかったゆき子のシンママ時代は冒頭の水季と重なった。母親ひとりで(子どもに)さみしい思いをさせないなんて無理と諦めて、まわりに頼るようになって少し楽になったゆき子は、その後、再婚し、いまやおしゃれなオレンジワインを息子と飲む、豊かな暮らしっぷりである。なによりである。

◆津野の言葉は視聴者の冷静なツッコミにも近い

ゆき子は夏に、水季が誰に頼ったか知ろうとしたほうがいいよ、とアドバイスする。すると、次の場面は、海が、一時期、水季の唯一の頼りだった「津野くんに会いにきた」と図書館にやってくる。

うれしい津野くんだが、海が帰ったあと同僚の三島芽衣子(山田真歩)に「ママの病気がわかったり死んでからあらわれるなんてみんな調子いいよね」「ゆってないです思っただけです」と愚痴る。彼の言葉は視聴者の冷静なツッコミにも近いだろう。

三島は「家族でもなんでもないんだけどさ、ずっとそばにいたのわたしたちだけで支えていたの津野くん」「いなくなったら急に外野な感じ」と津野の気持ちを慮(おもんばか)る。津野にもまた、わかってくれる人がいる。でも津野はまだそのありがたさには気づいていなそうだ。いまの彼は水季と海のことでいっぱいいっぱいなのだ。