◆騒ぐのではなく、心をつかむ
――期待される役割をこなすというのは受け身の姿勢に見えて、自分次第で攻めの姿勢になるということですね。ただ、日本では長らく主張する女性が歓迎されてこなかったことを考えるとむずかしさも感じました。
ジェーン・スー:いまはSNSで自己主張や自己表現といったことをされる方も多いと思いますが、どれだけ人より目立てるか、という場になっているように見えます。自分の思ったことをそのまま表現するには、練習が必要なんだと思うんですよ。でも私たちは残念なことに、学校や家庭の教育で自分の主張やそれを発信することをそれほど尊重されてこなかった。いきなりやれって言われても、むずかしいですよね。
北斗晶さんは、プロレスラー時代にいかに自己プロデュースをしたかのお話をしてくださいましたが、一瞬目立つだけなら誰でもできるんです。大騒ぎすればいだけだから。そうではなく、人の心を掴むのがむずかしくて、北斗さんはその天才だと思います。また、「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」など脚本を書かれたドラマが人の心を掴みつづけている野木亜紀子さんのお話も、たくさんのことを教えてくれました。
<文/三浦ゆえ 撮影/宮田浩史>
【三浦ゆえ】
編集者&ライター。出版社勤務を経て、独立。女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(宋美玄著、ブックマン社)シリーズをはじめ、『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『リエゾン-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなのこころがまえ』(三木崇弘著、講談社)、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)などの編集協力を担当。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。