湖で泳ぐ、楽しさと恐怖の両方の体験
本作は森や湖、深い自然に囲まれた舞台が神秘的で美しい。それと同時に、夕方に差し掛かるにつれて闇が深くなるため、どこか恐ろしくも感じられる。しかも、湖には幽霊が出るという噂があり、さらに「もしかすると本当にいるのかもしれない」と思わせる出来事も起こる。
この舞台そのものが、映画の主題とも密接に絡んでいる。何しろ、シャルロット・ル・ボン監督は、本作で「自然と、そのありったけの美しさは、同時に悩みにもなり得る」ことを描きたかったと語っている。その理由のひとつが、監督にとって湖で泳ぐことは「はしゃぐ喜びは、いつもうっすらと感じる不安と共にある」「楽しさと恐怖の両方の体験」であるからなのだとか。
これは、子どもの頃に自然の中で遊んだ経験があれば、きっと抱えたことがあるアンビバレントな気持ちだろう。楽しく遊んでいたけど、いつの間にか夕方を超えて暗闇がやってきたり、はたまた湖で泳いで遊んでいた時に、急に溺れかけたりと……そうした楽しい思い出と裏返しの恐怖が、間違いなくこの『ファルコン・レイク』の中にあり、多くの人が「あの頃」を思い出して、その美しい光景に浸りながらも、良い意味でゾッとできる内容でもあるのだ。
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