◆気づけば、不倫相手の知り合いをひとりも知らなかった
ケンと、共通の知り合いはほとんどいなかった。出会いの場であった異業種交流会の主催者さえ、ケンとは知り合いではなかったのだ。
当時、マスコミ関係の大きなパーティーが数多く開催されていた。SNSやブログで告知されているのを見つけて申し込めば、誰でも参加できた。ケンと出会ったパーティーも、そうだった。
最近なら、FacebookなどのSNSでパーティーの参加者を集める主催者も多く、参加者の身元を把握しやすい。が、10年前くらいはまだ主催者が自身のサイトの掲示板やメルマガ、ブログなどで告知をするケースが多かった。そして、多くのイベントは、参加者が身元を知らせなくても当日に飛び入りで参加できた。なので主催者すら参加者を把握しきれていないことが多々あったのだ。
そんな中でカリンさんとケンは、まるでドラマの主人公のように、ふいに知り合った。そしてあっというまに別れがやってきたのだ。
「今思えば、なぜ私はケンに聞かなかったんでしょうね。誰の紹介でこのパーティーに来たのって。私はスタイリスト仲間に誘われて参加していて、ケンから私たちに声をかけてきたんです。そのとき、ケンはひとりでした。普通はああいうパーティーってひとりでは参加しないですよね。誰と来ていたんだろう……」