養子縁組合意したはずの3月から7ヶ月が過ぎた23年10月8日、池田家の親戚筋の複数人が厚子さんを訪問し、事件が起きたという記録があるというのだ。

 カバヤ側が保管するこの訪問時の録音を起こしたメモによると、次のようなやりとりがあったようだ。

 親戚・女性 いただいたお手紙には、この方が厚子様の養子になられると書いてありますが。

厚子様 うかがっておりません、全然。

親戚・女性 ご存じではない?

厚子様 全然、存じません。

 厚子さんは高齢なので物忘れなどもあるかもしれないが、その場ではっきりと、いい切ったというのだ。

 しかも文春が手に入れた冒頭の手紙の直筆は、細工が施されている疑惑があるというのである。文春が入手した原本は、不可思議なものだったという。

 完成版では、〈基弘 阿久利を いく久しく よろしくお願い申し上げます 池田厚子〉と厚子さんが一筆したためたように読める。

 だが文春によると、「数センチ大の六枚の紙片を順番に貼りつけている。あたかも一筆書きしたかのようにみせる意図があったことが窺える」というのだ。

 こうした“疑惑”を池田家と親しい「名家」はどう考えているのか。

 鷹司尚武(79)。霞会館理事長であり、鎌倉時代以来の名家「五摂家」の1つである鷹司家の現当主である。鷹司はこういっている。

「手紙は私にも届きました。お仕えしてきた厚子さまを巡る今回のことが、本当に残念でなりません。様々な問題が耳に入っております。あの手紙が偽物だという見方も。何が事実なのか、証拠があることなのか。養子縁組が法的に済んでしまったのであれば、何ができるのか……。仮に、すべて聞いている通りであれば、あれは家の乗っ取りです」

 カバヤに質問状を送付すると、代理人弁護士から受任通知が届いた。主に次のような回答があったという。

「池田厚子様と基熙氏及び阿久利氏が養子縁組を行うに至り、厚子様を支えていきたいと考え、当社も協力できる範囲でサポートを行わせて頂いています。(霞会館には)入会申し込みを行っておりません。(養子縁組の)合意書に関しては、守秘義務があるのでお答えできません」