◆抑えられた衝動を示す横浜流星による覚悟
また『百円の恋』や『ケイコ 目を澄ませて』などで高い評価を得た映画でボクシング指導を手掛けてきた俳優でありボクシングトレーナーの松浦慎一郎へ、横浜流星は真剣な眼差しで、こう頼んだという。
「今まで松浦さんが作ったことのないボクシングシーンにしてください。そしてプロから見てカットで誤魔化していると思われないようにしてください」
その言葉通り、妥協を決して許さず、最高のもの、いや今までにはないものを作り上げようとする横浜流星の覚悟は、きっと出来上がった映画からも感じられるはずだ。
その松浦慎一郎自身、「自分勝手でカッとなる乱暴なボクシングから、周囲の人たちのためのボクシングへと変わっていく様子を見せたい。そういう下地を作っておくと、演者の感情が乗って、現場でドラマが生まれる」という考えでボクシング指導に挑んだそうだ。
塞ぎ込んだボクサーの再起の物語と、乱暴だった主人公・翔吾に変化が訪れる様と、横浜流星という俳優の挑戦。それぞれが試合シーンで昇華されるカタルシスを、ぜひ味わってほしい。
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