◆オファーの決め手は『新聞記者』

© 2023映画「春に散る」製作委員会
 主人公の翔吾に横浜流星というのは、瀬々敬久監督たっての希望だった。もちろん空手で世界チャンピオンになった経緯や『きみの瞳(め)が問いかけている』でのキックボクサーの役も把握していたが、実は決め手となったのはNetflix版『新聞記者』での等身大の青年の演技だったそうだ。

 なるほど、普通の青年にも思える一方で、理不尽なことに憤りを募らせ、かつ繊細さも持ち合わせている役柄は『春に散る』に通じるところもある。

 かつ、今回はギラついた目をしていて好戦的なふるまいもしているので、ともすれば粗暴すぎて感情移入しにくいキャラクターになってしまいそうなところを、横浜流星はその潤んだ瞳、もしくは一挙一動に表れた「抑えられた衝動」をもって「傷ついていることがわかる」「放っておけない」主人公として魅力的に見せていた。