◆不良息子っぽい横浜流星と、父親のような佐藤浩市

© 2023映画「春に散る」製作委員会
 翔吾の荒々しい性格はボクシングのスタイルにも現れており、そのせいでジムから入会を断られたりするし、とある問題を起こして広岡が対応に追われたりもするし、終盤ではとあるエゴイスティックな主張をする一幕もある。

 やんちゃを通り越して不良息子のような横浜流星に、口ではなんだかんだと言いつつお父さんの佐藤浩市が見捨てず構ってあげるかのような、ピリピリとしながらも、ちょっと微笑ましくさえある関係性が魅力的だった。

 ちなみに翔吾は原作ではボクシングジムの会長の息子だったが、映画では幼い頃に父親が出ていき母親に育てられたという設定に変わっている。だからこそ、翔吾が広岡に「本当にいて欲しかった父親」の姿を投影をしているようにも思える、上手いアレンジだった。

 ヒロインの佳菜子(橋本環奈)との関係もとてもやさしく尊いものだったので、そちらも期待してほしい。