◆インターバルをはさみながら頂点を極める

『今日、恋をはじめます』が、2010年代のラブコメ実写映画化ラッシュの初陣を飾るような作品だったことを思うと、10年単位で流行が変わるに映画界の時の流れを感じる。そのままラブコメ作品の覇者になる路線もあったのに、松坂は、あえて若手俳優の王道を進まなかった。

 主演のあとに助演をやり、また主演をはって助演でインターバルをはさむ。助演が主演を担う上でのパワーアップになった。松坂が自ら求めたこの出演方式が、他の俳優にはないオリジナルの俳優像を松坂にイメージ付けた。

『新聞記者』※Amazon Prime videoより
『新聞記者』※Amazon Prime videoより
 助演によるインターバルがあったからこそ、近年の主演作品でも抜群の実力を発揮できている。『孤狼の血』(2018年)や『新聞記者』(2019年)では、社会派の顔を垣間見せながら、気骨のある役柄をまっとうした。第46回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞した『流浪の月』(2022年)では、長尺の全編中、粘り勝ちの演技で、俳優道のひとつの頂点を極めた。