◆主演俳優としてのイケイケ時代
デビューからすぐに主演をはる才能は、限られた逸材にだけ与えられたものだが、ハタチそこそこの松坂には、当時から主演俳優としての演技に説得力があった。
2012年公開の映画『今日、恋をはじめます』を思い出してみる。同作は、少女漫画を原作とする実写化映画の中でも特に名作だと思う。デビューまもないイケメン俳優にとって登竜門といえるラブコメ作品でさえ、観客の心に残る好演をさらっとやってのける。松坂が演じた椿京汰は、高校のクラスの人気者。俺様的で、軽薄な雰囲気がある役柄は、ラブコメの王道キャラクターだ。歩いているだけで多くの女子たちの視線を釘付けにするたたずまいには、松坂が観客から受けるラブコールと比例するかのようなカリスマ性があった。
主演作こそあったものの、まだ“実写化王子”前夜のフェーズにいた山﨑賢人との相性もよかった。山﨑が脇に回り、縁の下の力持ちになるくらい、このときの松坂は、主演俳優としてイケイケに輝いていた。