「力持ちでクールだから仲間に入れよう」といった若者の単純な思考回路が描かれる瞬間もあり、好く際も嫌う際も相手をアイコンでしか見ない人間の浅ましさを示す映画であった。

痛々しくも愛おしい変身劇

とはいえ、外見は見知らぬ相手の印象を形成する際に重大な役割を持っている。見慣れない外見をした存在に対して人々がまず恐れを抱いてしまうのは自然な感情といえるだろう。今作の“新生物”たちには、その恐れにも共感できる絶妙にグロテスクなデザインがあてがわれている。動物らしい爪が生えてくる描写や、元の人間から“新生物”になるまでの半端に変形を遂げた過程など、実際に目の前で見れば本能的に身を引いてしまいかねないシーンは多かった。

© 2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS.

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しかし、本当の人間性はその“一度恐れた後”に現れるといえるだろう。恐ろしく、見慣れない存在を、恐れ、知らない状態のままで排除しようとするのか、それとも理解し、理性をもって対処しようとするのか。不慣れな状況でこそ、人間が持つ理性・判断能力をそこで機能させられるか否かが問われる。

今作では、一見たしかにグロテスクだったり恐ろしかったりする“新生物”たちが、一定の期間見続けることで愛おしく、可愛らしく、友好的に見えてくるという感覚を何回か体験することができる。その時、我々の恐怖が無知から来るものだと、そして漠然とした恐怖のままに行動することは、未知のものを知ろうともせず否定することであると改めて実感させられるのだ。