そんな筋金入りのクラッシュファンだった彼女にとっても、『極悪女王』は大満足の作品だった。細部に至るまでの再現度の高さと「女子プロレスラーそのもの」になりきったキャストの熱演に心を震わされた。

伊藤「本当に『極悪女王』は素晴らしい作品です。ただ2つだけ残念なことがあって。1つはやっぱり松永4兄弟(ドラマでは松永3兄弟)の健司さん、高司さん、国松さん、俊国さんが誰1人としてこの作品を見られなかったこと。それが本当に残念だった。あともう1つは、私もエキストラとして親衛隊役で出たかったなってことですね(笑)」

 『極悪女王』はダンプ松本の引退で幕を閉じるが、物語はその後も続く。長与と飛鳥が1989年に引退し、クラッシュ・ギャルズは解散となるが、長与が93年に、飛鳥が94年に復帰。2000年に「クラッシュ2000」(2005年に封印)としてタッグを再結成した。この時、伊藤はある誓いを立てたという。

伊藤「『クラッシュ2000』が誕生した時、かつてクラッシュに青春を捧げた“あの頃の少女たち”がプロレス会場に戻ってきたんです。それを目の当たりにして『いい光景だなあ』と思いました。みんなもう少女ではなくなって、結婚したり、子どもが生まれたり、プロレスを離れて普通の生活を送っていたのに、『クラッシュがまた見られるなら』と会場に帰ってきたんです。私は1998年にジャッキー佐藤さんを取材できたんですけど、そのジャッキーさんは翌99年に41歳の若さでお亡くなりになられた。その翌年に『クラッシュ2000』がよみがえった時に、ビューティ・ペアはもう一生揃うことができないと痛感したんですね。でも、千種さんと飛鳥さんは健在です。だから、2人が今後揃って何かをしたいと言ったら、その時はできる限りのお力添えをしたいと心に誓いました。来年はクラッシュのデビュー45周年で、『クラッシュ2000』の解散からちょうど20年。もし2人がアクションを起こすなら、全力でサポートしようと思っています」