でも、トランスジェンダーであることを描こうとすると、結構すぐに“不作法”になりがちなんですよ。実際に生活で困るのはトイレのことだったりするので、すぐに社会的な仕組みや政治の話になってしまう。
社会問題も視野に入れつつ、個人の受け取り方の問題に限定しないように、嘘偽りのない形で物語として描くのはさじ加減が本当に難しいです。
◆悩みがあっても、笑っているし友達もいる
――確かに、主人公が酷い目に遭ったり、差別に苦しむシーンばかりだと、読んでいて辛くなってしまうかもしれないですね。
スタニング沢村:私が子供の頃に見たトランスジェンダーを扱った作品は、ほぼ全部暗かったんです。特に印象的だったのは、『3年B組金八先生』で上戸彩さん演じる、学校では女子として扱われるトランスジェンダーが登場した第6シーズン。
当事者の辛さを描くという点では画期的な作品だったし、それによって救われた人は沢山いると思うのですが、私は「悩んではいるけど、毎日こんなに辛くないし、笑顔で過ごしてるんだけどなあ」と思っていました。
「ここまで辛そうな顔をして生きていない私は、本当のトランスジェンダーとはいえないのかな」と感じて余計塞(ふさ)ぎ込んでいました。
◆性自認について悩む子供がいたら
――もし、性自認について悩んでいる子供がいたら、どう接してほしいと思いますか?
スタニング沢村:子供が自分から「トランスジェンダーかもしれない、病院に行きたい」と言っていたら相当悩んでいると思うので、真剣に聞いてあげるといいんじゃないかと思います。
一方で、ホルモン治療や体を変えることは体に負担がかかるので、医師に相談しながら慎重に判断するべきことだと思います。例えば、私の場合はテストステロンを増やす療法を受けているので、体力が上がったり性格がポジティブになったりするという良い変化を感じているのですが、肝臓には負担がかかっているんです。